月経の悩み
月経(生理)の悩みは、産婦人科の受診理由で最も多いものかもしれません。
15歳から49歳までの女性に行われたインターネットによる調査では、7~8割の女性に月経(生理)に付随した何らかの不快な症状があり、その中では痛みに関連したものが最も多く、約5割の女性が月経痛(生理痛)に悩んでいることがわかっています。
月経痛(生理痛)
について
月経痛で悩む人はたいへん多く、痛みが強いときには仕事や勉強が何も手につかなくなる程つらいものです。月経痛が強い場合には、子宮内膜症などの病気が隠れていることもあります。また、「女性が仕事や学校を休まなければならない原因の第1位が月経痛であり、月経時の痛みを確実に減少させることができれば、大きな社会的意義がある。」という疫学的な研究発表もあります。
「たかが生理痛だから…」と我慢しないでください。痛みを和らげる方法は鎮痛剤だけではありません。ピルや漢方など多くの対策があります。もちろん痛みを強くしている病気が無いことを確認することも大切です。
「されど生理痛。」なのです。
月経困難症
月経痛(生理痛)が強い・・・・医学的には月経困難症と言います。
月経困難症の症状とその原因についての解説、診察について、治療についてをご紹介いたします。
どうぞ、心配なさらず診療にいらしてください。また、ご不安なことなどお話をお聞かせください。
月経困難症の症状
月経困難症とは“生理の期間中に生理に伴って起こってくる辛い症状“を、ひとまとめにした表現で、お腹や腰の痛み・吐き気・頭痛・疲労感・イライラ・下痢・気分の落ち込みなどが見られます。
これは症状を起こす原因の有無により、以下の機能性月経困難症と器質性月経困難症の2つに分けられます。
機能性月経困難症
子宮や卵巣に病的な原因がないのにも関わらず症状が出るものです。
生理の初日~2日目に強いことが多く、痛みは痙攣性・周期性です。生理中に子宮内膜から作られる痛み物質により引き起こされると言われています。
みなさん足が攣ったことがありますか?ものすごく痛いですよね。こむら返りは足の筋肉が痙攣状に収縮することで生じます。
子宮は平滑筋という筋肉でできています。月経痛はこむら返りと同じ状況が子宮に起きたと理解すればわかりやすいと思います。
器質性月経困難症
子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症など子宮・卵巣関連の病気が原因となって、痛みなどの引き起こしているものです。
生理が始まる少し前から終了後まで継続する持続的な痛みのことが多いとされています。
診察について
どんな診察をするの?
内診や超音波検査を行って、器質性月経困難症の原因となる病気の有無を確認します。状況によって血液検査を行うことがあります。
内診が困難な場合(性交渉未経験など)は経腹超音波検査を行います。
治療について
治療法の選択は?
機能性月経困難症に対しては、辛い症状をコントロールする治療を行います。
器質性月経困難症に対しては原因となっている病気の治療が基本ですが、辛い症状をコントロールする治療も並行して行います。
処方薬について
症状コントロールする薬は・・・・以下のお薬があります。
患者さんの置かれた環境や希望に合わせて選択します。
- 痛みどめ
- 低容量ピル
- プロゲスチン
- LNGーIUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)
- 漢方薬
など
PMS(月経前症候群)/ PMDD(月経前不快気分障害)
PMSとPMDDは月経が始まると急速に症状が治りますが、時にPMSの後に月経困難症が続くこともあります。このような場合は辛い症状が出ている時期が長くなるため学業や仕事のパフォーマンスに多大な影響が出てしまう場合があります。
PMS (月経前症候群) |
月経前の時期(黄体期)に、お腹の張りや痛み・乳房の張りや痛み・むくみといった身体症状、イライラ・憂鬱・集中力の低下など精神的な不調が現れるものをPMS(月経前症候群)と言います。 |
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PMDD (月経前不快気分障害) |
PMSに比べて症状が重く、精神的な不調が強いものをPMDD(月経前不快気分生涯)と言います。 |
よく見られる気分の変化
- 急に悲しくなって泣いてしまう。
- 怒りっぽくなって人間関係にトラブルが出る。
- 物事に興味がない
- 疲れて何事にもやる気が起きない。
- 自分は大した人間ではないと落ち込む。
- 過食
- 不眠、あるいはとにかく眠い
治療について
どんな治療があるの?
- カウンセリング
- 運動療法
- 生活指導
- エクオール(大豆イソフラボン代謝物)
- 漢方薬
- むくみがひどい場合:利尿薬
- 低容量ピルを推奨(産婦人科診療ガイドラインではドロスピレノン、エチニルエストラジオール錠)
- 精神的な不調が強い場合:選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)